6/9(月)・7/7(月) 岡【レビュー】3点リーダーから読み取れるもの

2014年07月09日 20:26

 昨年度は読点の打ち方の規則について考えてきました。ゼミ中に読みに関わる読点があるのではないかという指摘を受けたこと、強調のための読点を指摘する先行研究があることから、今回は句読点と読みを結び付けている論文を扱いたいと考えました。そこで選んだのが、内田英一(2010)「『星の王子さま』再論―句読点から読み取れるもの―」です。

 この論文は読点ではなく3点リーダーに注目したもので、内田氏はその用法を以下の5つに分けています。

①時間を表すもの

②記憶の欠落を表すもの

③列挙するものがずっと続き、それらから読み手に推測可能なものを省略するもの

④未決着・不決断による思案の時間を表すもの

⑤意味を強め余韻を残すもの

併用記号(!…と?…)についても言及し、章末の3点リーダーについてはそのリンク効果を指摘しています。これらは全て、3点リーダーを書き手の側から考察したものだといえるでしょう。では、読み手側は3点リーダーをどのように受け取るのか。これが2週目の発表のテーマとなります。


 2週目の発表では、内田氏による3点リーダーの分類(上記の5つの用法)を用いてアンケート調査を行いました。アンケートの結果に差が生まれなければ、3点リーダーは言語化できない感情の過不足を代弁する記号として優れているといえるでしょう。逆に、アンケート結果に差が生まれれば、3点リーダーを用いることで誤読が生まれる可能性を指摘することができるのではないでしょうか。

 調査の結果では回答が割れたものが多くありました。しかし、間を表す自然発生的な3点リーダー(分類①②④)と書き手が意図的に打った主体的3点リーダー(分類③⑤)にグループ分けすると、同じ文章からは同じグループの意味を読み取っていることが分かりました。調査結果やゼミでの議論を経て、3点リーダーには以下の3つがあるのではないかと考えています。

①間を示すもの

②余韻を示すもの

③3点リーダー以外の言語指標や文脈から読み取れる感情を増幅するもの

③に表したように、3点リーダーから読み取れるものは非常に多様であると考えます。3点リーダーから何を読み取るかというよりは、3点リーダーの有無で読み取りがどのように変わるかを調べる方が自分の知りたいことに近づけるような気がしました。


 今後はテーマを3点リーダーではなく句読点に戻したいと思います。今回3点リーダーを扱ったことで、記号がただ間を表すだけでなく筆者の意図を伝える可能性だったり、文脈から読み取れる感情を強める可能性をもっていることが分かりました。句読点を調べるうえでも参考になりそうです。


 今までは読点にばかり注目してきましたが、今回の発表の中で「……」よりも「……。」の方が余韻を読み取りやすいのではないかという指摘があり、非常に興味深かったです。