5/25(月)・6/8(月) 矢野 【レビュー】 立川和美(1989) 「中心文およびトピックセンテンスに関する再考察―中核文設定の提案―」

2015年06月29日 05:47

 更新が遅くなってしまい申し訳ございません。5月25日、6月8日の発表のレビューです。

 今回の発表も一年次、二年次に引き続き文脈読解力、文章の読解のプロセスを見ていくことを目標としており、一年次は要約文で用いられている語について、二年次は佐久間(1989)における残存認定単位について調査を行ってきました。今回は、〈文章の中で重要な文を見出す〉という点から、立川和美「中心文およびトピックセンテンスに関する再考察―中核文設定の提案―」(1989)を扱いました。

 

 論文では、文と文章の間の単位である「文段」の中核的な情報をまとめる「中核文」を指摘する際には、反復表現・指示表現・叙述表現・文型・文体・接続表現・意味関係が指標となること、中核文には、文段中に明確に一文で中核文が存在する「顕在型」と、読み手が言語的指標から作り出さねばならない「潜在型」が存在すること等が述べられていました。一週目の議論内で、そろそろ三年間の実験結果をまとめていってはどうかというという意見をいただいたので、〈要約文作成の際にどのようなことが行われているか〉という仮説を立てることを二週目の目標としました。

 

 二週目の発表では、一年次のKH Coderというフリーソフトによる語の使用・共起の観点、二年次の佐久間(1989)による残存認定単位の観点に加え、中核文とその指摘の際に用いられる言語的指標も見ていくこととしました。調査では、佐久間(1989)で使用されていた中括式、6段落、全16文の文章を使用し、要約文と中核文の指摘を行ってもらいました。(ここで〈中核文の指摘〉という形式を取ってしまったことで、顕在型の中核文しか視野に入れられていないということになってしまっています。)

 

 調査結果を過去の調査結果と照らし合わせて分析、考察を行い、以下のような仮説を立てました。上から順に、法則として適用されやすそうだ、としています。

○文章に明確な構造や型(二項対立、対比、まとめの文の位置、等)が見られる場合、文章全体をその構造や型に当てはめるか、その構造や型を中心にして読解している。

○一般化、抽象化された文はそのまま要点として把握される。それらの文は統括文であったり中核文であったりすることが多い。

○具体例はまとめられるか縮小される。具体例か否かは、「、」による羅列、「と」による並列、品詞、同一の意味レベルといった要因で判断されている。

○余計な修辞(~なのではないだろうか、等)は削られ、簡潔な形(~なのだ、等)で表現される。

○明確に文中に無くとも、読み手は文章中に指示語・接続語等つなぐ表現を置きながら読み進めている。

●〈主体・対象と動詞の関係の取り違い〉(主述のねじれ等)、〈物事の頻度(生起頻度等)・範囲(論や主張が適用される対象の範囲等)の取り違い〉が為されると内容が適切に把握できていない。

 二週目の議論では、〈型〉、〈範囲〉等仮説内で使用している語の意味を明確に定義すべきだという意見や、プロセスを見るならば要約文以外にも眼球運動や書いている時の手元など他の所にも目を向けてみてはどうかという意見、観点が多くなり情報を扱いきれなくなっているため、調査の方向性を定めて情報量を絞ってみてはどうかという意見をいただきました。

 

 今後は、しばらく実験や要約文から離れ、他のジャンルから読解に迫っているものが無いか探してみようと思います。今回立てた仮説を根拠づけるものを探しつつ、他の手法や観点、知識も身につけていきたいです。

 

 

【参考文献】

佐久間まゆみ 『文章構造と要約文の諸相』 1989年 くろしお出版

立川和美 「中心文及びトピックセンテンスに関する再考察―中核文設定の提案―」 2000-2003年 『文体論研究』  第46巻 pp.1-14