5/16.5/30(月)河本【レビュー】『依頼表現における日本語学習者の中間言語  -中国語母語話者・韓国語母語話者の母語転移―』 和田由里恵ら (2010)

2016年06月12日 10:13

 前回は依頼談話を談話の構造面から分析した論文を扱った。発表を振り返って、そもそもの研究の目的とこのまま談話構造の分析を行っていく方向性は合っているのか考え直したいと思い、その後日韓依頼談話という分析対象少し幅広く文献を当たることにした。

 そして、一回目の発表ではその読んだ論文の中で興味のある分野を体系化し、まとめた。その読んできた文献の中で和田ら(2010)は最もまとめた内容全体に関わってくる論文だと判断し、今回主に取り上げる論文として選択した。和田ら(2010)は日本語と韓国語の言語の相違の要因として語用論的側面から考察を行っている。

 

論文全体を通して見えてきたことは、依頼談話に関してポライトネスの観点から見ると、日本人はネガティブポライトネス(又はそれとポジティブポライトネスとの混合)を、韓国人はポジティブポライトネスを多く用いて依頼を進めている、と多くの論文で述べられていた。

また、この日韓の依頼表現の相違の要因に関しては語用論の観点から考察できるのではないか、という着想を得た。語用論の観点から考えられる要因とは、決まった状況と結びついた表現が言語ごとに異なることによる言語語用論的要因と、国ごとに存在する社会的、文化的前提による社会語用論的要因の二つである。しかし、このことに関しては実際の調査、分析とどのようにつないでいくかはまだ検討中で、今後具体化していきたい。

 

また、二回めの発表では調査を行った。概要としては、二年次に使用した柳(2012)の一部トレースで、日韓の依頼表現における相違を調査する、というものだ。調査対象者は全て依頼者役を担当しており、学生同士の談話を収集した。今回は日本人同士の談話のみ採取した。そして、そこで得られた会話データを、『話段』という言語単位を用いて談話の構造面から分析を行った。

結果としてはトレースだったため、予想通り日本人によく見られる談話構造であったことが確認できた。ただ、それらも言葉の捉えようによっては違う構造パターンにも分類できると感じられ、今後の課題として残った。

 

 

事前に準備しておいたことで、昨年よりは自身の考えを発表に持ってくることができるようになったと思う。そうは言うものの、まだ日韓の相違をどのような形で分析するかという構想はイメージ段階にとどまっているので、今後語用論の観点でより具体的な観点を見いだせるよう進めていきたい。

また、二回めの発表では昨年行えず気がかりだった調査にも少しであるが経験することができた。調査方法に関しては、今後調査目的等を固めてから改めて検討したい。

 

今回もフロアのみなさんには、多くの貴重な意見を下さって本当にありがとうございました。

今期一組めの個人発表でしたが、無事に終えられて良かったです。