4/14 江原 【レビュー】秋永一枝(1992) 「言葉の馴染み度とアクセントとの関係」
更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
新年度第一回のプレゼミの発表内容について報告させていただきます。
あらかじめ準備しておいたレジュメが足りなくなるほど、たくさんの1~3年生が見に来てくださいました。
感謝しております。
1年生向けのプレゼミということで、昨年度の私の発表内容や、方言学についての補足も行いながら発表を進めました。
今回の発表で使用した論文は、秋永一枝(1992) 「言葉の馴染み度とアクセントとの関係」です。
昨年度の発表では、池田史子(2008) 「山口方言における特殊拍とアクセントの関係」の中で指摘されている、「特殊拍にアクセントが置かれるという山口方言の特徴が、若年層になるにつれて消失しており、東京方言に近づきつつある」ということに着目して、調査を行いました。
前回の発表の内容については、こちらをご覧ください↓
8/29(木)・10/28(月) 江原 【レビュー】 池田史子(2008)「山口方言における特殊拍とアクセントの関係」
アクセントが変化する、または保存される原因としては、年齢差以外にも、①居住地域の違い、②親の影響、③使用頻度の違い等が考えられるのではないかというのが、昨年度の発表で指摘された点です。
そこで今回は、3つの中でも裏付けが進んでいなかった③使用頻度の違いという点に着目して、この論文を選定しました。
秋永(1992)の内容を簡単に説明すると、
・個人における言葉の馴染み度とアクセントには深い関係がある。また、馴染み度は個人の使用意識とも深く関わる。
・日常生活において、使用頻度の高いもの(馴染み度の高いもの)は、伝統的なアクセントが保存されやすい。
・使用頻度の低いものや使われなくなった言葉(馴染み度が低いもの)は、アクセントがゆれたり、平板化したりする。
というものです。
前回の調査で使用した調査項目は、「使われなくなった言葉」であるとは言い難いため、この調査と全く同じ分析ができるとは言い難いです。
しかし、馴染み度が高いほど伝統的なアクセントが保存される傾向にあるということ、逆に馴染み度が低いほど、類推アクセント、アクセントの型が多様化したり、平板化が起こったりするということは、方言においても見られるのではないかと予想しました。
そこで、前回の調査対象者のうち2人にアンケート調査を行い、前回のアクセント調査に用いた語句の馴染み度を調べ、アクセントとの関係を調べました。
結果を見てみると、馴染み度の高いものほど伝統的なアクセントが保存されているとは言いがたく、むしろ、馴染み度の高いものこそ、東京方言のアクセント型と同様になっていたり、平板化しているように思えるという結果に。
まさに論文とは真逆。正直焦りました・・・笑
この原因は何でしょうか。
秋永(1992)の2章のように、年々使われなくなっているような語であれば、その語のアクセント自体に触れることが少なくなるので、馴染み度が低いと類推アクセントで発音するようになったり、平板化が起こったりすると言えるのでしょう。
しかし、今回の調査語句はどれも、日常生活において一度は耳にするような語で、どれも消えつつあるとは言えず、むしろ、馴染み度の高い語ほど、さまざまな場面で使われるため、山口方言以外のアクセントを耳にする可能性が高いと言えます。
そう考えると、普段あまり馴染みがない、つまり使用しない語句については伝統的なアクセント型が残っており、逆に馴染みのある、つまりよく使用する語句については周囲の使用頻度も高いため、共通語のアクセント型の影響を受けたと考えてもおかしくはないのではないでしょうか。
このような考察を出した後に白勢先生に確認したところ、私の調査結果同様、秋永(1992)とは逆の結果が出ている論文もあるそうなので、目を通してみます。
いや、先に目を通しておくべきでした。反省してます。
今回の発表では、これまでの調査の結果をもとに、調査語句を再検討すべきではというご指摘もいただきました。
たとえば、複合語に絞るというのが案として出ています。
ほかにも、使用頻度というよりも聞く頻度を調査すべきではというご指摘もいただきました。
検討していこうと思います。
はじめにも述べたとおり、今回はプレゼミということで、普段の発表と違い、論文要約、調査結果の分析・考察を一回の発表で行いました。
そのため、あまり質問や議論の時間をとることができなかったのが残念でしたが、1年生に少しでもこのゼミの雰囲気が伝わっていればと思います。
私にとっても、今後につながる有意義な発表となりました。
さて、先日、新入ゼミ員向けの分野別勉強会を行いました。
たくさんの1年生(だけではなく2,3年生も)が参加してくれました。今後が楽しみです。
私ごとではありますが、卒論の題目も無事提出しました。
今回の発表内容も卒論の内容に直結しています。
夏休みにはまた帰省するので、さらに調査を進めていこうと思います。