11/21.12/5(月)河本【レビュー】依頼談話における談話構造の日韓対照研究予備調査2回目

2017年01月07日 11:57

 河本です。秋学期に行った発表の報告をさせていただきます。



 春学期に一度柳(2012)をトレースした実験を行ったが、その発表を通していくつかの課題を確認することができた。2回目の発表で再び予備調査を行うため、それにむけて以下の3つ課題の明確化とその解決に1回目の発表を充てた。


①被依頼者役(実験協力者)に「依頼を承諾するように」という指示を出すことで、自然会話とは違う流れを追う談話となってしまっているのではないか。

 柳(2012)では、日本人は依頼されたら条件などを確認するよりも先にまず承諾する、という分析結果となっていた。しかし、その要因は調査方法に在り、上記のような指示を受けることで、依頼された際に「まずは承諾しよう」という義務感のもと日本人は依頼されたらすぐに承諾してしまうのではないか、と考えた。そこで、被依頼者役を自然会話とし、依頼者役にはコピーするところまでが調査だと依伝えることにした。また、ロールカードに「依頼者用」「被依頼者用」や「依頼」という言葉を用いなかった。


②被依頼者役(実験協力者)が話の主導権を握っているのではないか。

 そもそも今回の実験の調査対象は依頼者役なので、その点で被依頼者役が会話の流れを決めていることには問題がある。被依頼者役(実験協力者)のみ複数回実験を行うため、慣れで会話を進めている印象があった。そこで、今回の調査では協力者の使いまわしをやめることにした。また、友達からノートを借りるという場面設定に起因して、被依頼者役の個人的な事情が談話に影響を与えたのでは、という指摘をいただいた。ノートを今持っているか、同じ授業を取っているか、借りるノートの種類などによって会話が左右されていた。そのため、今回は借りるノートの科目を依頼者と被依頼者が共通でとっている科目に事前に指定した。ここを定めておいたおかげで依頼にリアリティが出た。(ただし、弊害として、調査対象を探すのが大変になる可能性と、共通の科目をとっていたとしても、特に借りるものがなかった場合もあり得るので注意が必要だという点が出てきた。)


 2回目の発表では、以上の変更を加え実際に予備調査を行った。結果としては、上記の変更はうまくいたが、新たな課題として会話の始めのぎこちなさが見受けられた。依頼に入る前にしばらく他の話題でリラックスしてからの方がよかった、という意見をもらったので参考にしたい。


 今後の方針としては、柳(2012)中で「今後の課題」として残されているもののひとつ、被依頼者も分析対象に加えることも解決したいと考えている。それに向けての当面の課題としては、話段と一文の単位の決定、設定される場面の再考、被依頼者側に焦点を当てた先行研究の調査が考えられる。また、韓国人協力者の確保も急がれる。



 今回もフロアのみなさんには、多くの貴重な意見を下さって本当にありがとうございました。これまで何度か発表を行ってきましたが、特に今年の2週の発表はどちらもとても得るものが多く、とてもありがたかったです。

大変お世話になりました。ありがとうございました。