11/11,18 岡 【レビュー】村越行雄(2013)「句読点の方法論的分析―読点をどこに、なぜ打つのか―」

2014年03月30日 09:26

 更新が遅れまして申し訳ありません。2013年度後期の発表内容を報告致します。

 

 1週目の発表では、読点を統語論・意味論・語用論を使って分析し15の基準に整理した村越氏の論を確認しました。その過程で、統語論も意味論も語用論の影響を受けているのだから今後は語用論的読点に絞って研究してみてはどうか、という意見をいただきました。

 

 そこで、2週目の発表では教科書教材を用いて読み手の年齢に応じた読点使用について分析・考察しました。対象としたのは以下の2作品です。

  「ずうっと、ずっと、大すきだよ」ハンス=ウィルヘルム作/ひさやまたいち訳

  光村図書出版株式会社『こくご 一(下)ともだち』平成17年6月5日発行

  「カレーライス」重松清

  光村図書出版株式会社『国語 六(上)創造』平成17年2月5日発行

 分析の結果、1年生の教材では主格主語・主題主語に関わらず陳述と対応する主語の後に読点を打っていることが分かり、主述関係に注意し登場人物の行動を中心に読むことを促している、という考察が出ました。一方、6年生の教材では主語の後に打つ読点の割合は減り、節ごとのまとまりを意識した読みが促されていると考えられます。これらは学習指導要領を反映した読点だと考えられますが、教科書に載せる際に読点の移動があったのかについて調べる必要があります。

 2週目の発表で興味深かったのは、「カレーライス」について提出された〈読点で登場人物を強調することで読み手の目の前に「お父さん」がいるかのように思わせ、物語にひきこんでいるのではないか〉という意見です。「カレーライス」は「ぼく」一人称の小説であり、「ぼく」の存在は常に意識されているため読点を打つ必要はないが、「お父さん」に焦点をあてるためには「お父さん」の後に読点を打つ必要があるのではないか、という指摘です。つまり、読者の注目を集めるための読点であり、〈読み〉に影響を与える読点であると考えられます。

 また、同じく「カレーライス」について、会話文の前に句点がない場合は〈間〉として読点を打つのではないかという考察が出ました。

 

 今後は、教科書に載せる際の読点の移動とそれがもたらす影響について調査するとともに、説明文や教科書以外の文章についても分析・考察していきたいと思います。また、文章中の句読点と音読における間の関係性についても考えていきたいと思います。